礼をするときに胸元で両手を合わせる日本人!

「日本人はどうしてお辞儀をするときに両手を合わせるんですか?」
「それはタイ人です」
「でも映画では…」
「それは映画です」
「でもご飯を食べるときに…」
「それは“いただきます”です」

かつてこのような会話をしたことがあります。来日した海外の俳優さんも勘違いしている人が多く、両手を合わせて礼をしていたりします。テレビや写真で見たことがあるのではないかと思います。

胸元で両手を合わせて礼をする。これはタイやインドなどの挨拶の仕方です。ただ、挨拶ではありませんが日本でもやることはあります。親しい人に迷惑をかけたときが典型でしょう。両手を合わせて「ごめんごめん」と言ってみたり、片手で手刀を切りながら謝罪してみたり…このように謝罪と“いただきます”を除いて日本人が頭を下げながら両手を合わせることはありません。

海外でこういった間違った“日本式のお辞儀”が定着してしまったのは映画の影響でしょう。日本の文化を知らない人は「映画に出てくるイメージこそ日本だ」と思い込んでいます。映画の世界ですから分かり易くするためにステレオタイプを用いています。日本人ならメガネにカメラ。古いものでは七三分けと出っ歯ですね。

既存のステレオタイプに色を付けて映画で流す。映画を見た人が演出された日本人を新しいステレオタイプとして認識する。生み出された新たなステレオタイプに演出を加えて映画にする。こうして悪循環に陥り、日本人のイメージがどんどん現実世界から離れていったのではないでしょうか。

お辞儀について当てはめて考えてみると、日本人役をしているアジア人、もしくは日本人をイメージして作られた演者が胸元で両手を合わせて礼をする。これを見た人が「日本人はこうやってお辞儀をするのか」と勘違いするというわけです。良いほうに解釈すれば両手を合わせることで分かり易く演出をした、とも言えます。まあ、演出だとしても誤解を与えるのは困りますけどね。

そうは言っても、ただの映画です。違和感を覚えたとしても娯楽は楽しむものです。細かい違いはどうでもいいじゃないかとも思います。しかし日本人としては瞬間的に「あれ?なんか違う」と感じしまうこともありますよね。無意識に感じてしまうというか、冷めてしまうというか…これは海外のドラマにありがちですが、すんごい片言の日本語をしゃべる日本人役の俳優さんとか(笑)。

あれって日本人からすると冷めますよね?なんでも海外の人からしたら日本語をしゃべらせるだけで「ワーオ!」となるようです。日本の人気が高いからこそ、日本語でしゃべらせるという側面もあるのでしょう。日本に興味があるということですから日本人としては嬉しい話しですよね。

でもこれって日本の映画やドラマでも同じことが言えます。ネイティブではない他国の人を起用して英語でしゃべらせる。これを見た海外の人は「おかしい」と感じるようです。しかし日本人からしてみればネイティブだろうが訛りがあろうが関係ありません。

「英語を話している」という事実が大事なのであって、訛りとかはどうでも良い話しです。そもそも、その国の視聴者向けに作られている作品ですからね。そういう意味では日本も海外も同じだということです。

脱線しましたが映画は楽しむものであり鵜呑みにして良いものではありません。もし間違えた日本式のお辞儀をする人を見かけたら容赦なく指摘してあげてください。一人一人の間違いを正していけば、いつかは正しいお辞儀が定着し、映画の演出にも影響を与えていくことでしょう。たぶん、きっと、いつかは、そうなることを祈っております。